Googleディスプレイ広告の【価値のルール】について

Google広告の設定項目の一つに、【価値のルール】という項目があります。

これは、コンバージョン値のルールを決める項目です。
分かりやすく言うと、お客さんのランク付けのルール付けです。

まずすべてのお客さんが一律で同じ金額を使うわけではないことはわかりますね?
多く買う人もいれば、少ない金額しか使わない人もいる。
だからビジネス的には多く買う人を呼び込みたいわけです。

その多く買う人に集中して予算を充てるための項目です。

※直接入札金額をあげる項目ではありません。
入札予算の内、どのターゲットに優先して予算を充てるかの項目です。

  • どんなターゲットにするか?(メインの条件)
  • どの程度金額を追加するか(値の調整)

の2つを入力することで調整できます。

実務的によく使うもの

メインの条件

メインの条件(プライマリディメンション)には3つの条件を当てられます。

  • デバイス
  • 住所
  • オーディエンスセグメント

の3つです。

そのうち、実務で最も多く使われるのは、ビジネスへの貢献度の違いが明確に出やすい以下の 2 つの条件です。

条件 (ディメンション)活用する場面調整の目的
オーディエンスリピーター/既存顧客や、特定の高価値なリスト(例:VIP会員、高額商品に興味を示したユーザー)をターゲティングする場合。新規顧客よりも価値が高い(LTV:顧客生涯価値が高い)ため、獲得競争で優先する。
地域(住所)地域によって商品の販売価格や利益率が異なる場合(例:店舗がある地域とない地域)、または競合状況が激しい地域利益率が高い地域や、顧客単価が高い傾向にある地域での入札を強める。

値の調整

📈 調整の目安(値)

調整は、「乗算」(0.5∼10 倍)を使うことが一般的です。これは、実際の売上金額をベースに、相対的な価値を調整しやすいからです。

1. オーディエンス(常連客やVIPリスト)の場合

  • 調整: 1.5 倍 ∼3 倍乗算
  • 考え方:
    • 新規顧客(1 倍)に比べて、常連客は 1 回の購入単価が高かったり、将来的に何度も購入してくれる(LTVが高い)傾向があります。
    • そのため、その将来的な価値を現在のコンバージョン値に上乗せします。例えば、LTVが 2 倍見込めるなら 2 倍に設定します。

2. 地域(高単価エリアや激戦区)の場合

  • 調整: 1.1 倍 ∼2 倍乗算
  • 考え方:
    • 例えば、東京からの注文は他地域より平均単価が 1.5 倍高いことが分かっている場合、東京からのコンバージョン値に 1.5 倍を乗算して、その地域での獲得を優先させます。

⚠️ 実務上のポイント

  • 「追加」は慎重に:「追加」は、コンバージョン値が 0 円(資料請求など)の場合に、初めて価値を付けるときによく使われます。売上がある場合は、元の価値の比率を変える「乗算」が、入札戦略との相性が良く、より正確な調整が可能です。
  • **データに基づいて決定:これらの数値は過去のデータ(LTVや地域別の平均購入単価)**を分析し、論理的な根拠をもって設定することが最も重要です。感覚ではなく、データで 1.5 倍の価値があると証明できたら、1.5 倍と設定します。


練習問題

あなたはオンラインで高級バッグを販売する会社のマーケティング担当者です。Google 広告の「コンバージョン値のルール」を設定して、自動入札の精度を高めたいと考えています。

【現在の状況】

  1. 一般的な新規顧客のコンバージョン(購入)の価値は ¥30,000 です。
  2. 過去のデータ分析の結果、「既存顧客(過去に 回以上購入したことがあるオーディエンス)」は、新規顧客に比べて購入単価が平均で 倍高く、さらに将来的なリピート購入も期待できることが分かりました。
  3. あなたは、既存顧客のコンバージョンには、新規顧客の** 2倍**の価値があると考えています。

【質問】

このとき、**「既存顧客」のコンバージョンに対する「コンバージョン値のルール」**をどのように設定するのが最も適切ですか?

  1. 調整方式: 「追加」、値: ¥30,000
  2. 調整方式: 「乗算」、値: 1.5
  3. 調整方式: 「乗算」、値: 2.0
  4. 調整方式: 「追加」、値: ¥60,000

答えを選んでください。

答え

正解は 3番(調整方式: 「乗算」、値:2.0 )です。既存顧客の「将来的なリピートも期待できる」という点を考慮し、実際の購入単価の 倍に加えて、さらに高い価値( 倍)を設定するという判断は、実務的で非常に優れています。

また2倍なら「追加」の「30000」でもいいのではないか?という疑問にもお答えします。

「追加 (Add)」と「乗算 (Multiply)」の違い

コンバージョン値のルールを設定する際、「追加」を使うか「乗算」を使うかには、決定的な違いがあります。

調整方式計算方法調整後の値
乗算 (Multiply)(元のコンバージョン値) (設定値)元の値の割合を変更する
追加 (Add)(元のコンバージョン値) (設定値)元の値に一定額を上乗せする

「追加の ¥30,000」が適切ではない理由

元のコンバージョン値が変動する場合に、「追加」方式を使うと、価値の比率が歪んでしまう可能性があります。

1. 価値の比率が崩れる

今回の例では、新規顧客の購入の基準となるコンバージョン値が ¥30,000 です。

  • ルールで「追加:¥30,000」を設定した場合の計算:
    • 既存顧客の購入A(元値 ¥30,000):¥30,000+¥30,000=¥60,000→元の値の 2倍
    • 既存顧客の購入B(元値 ¥10,000):¥10,000+¥30,000=¥40,000→元の値の 4倍

「既存顧客の価値は新規顧客の 倍」という目標だったにもかかわらず、購入Bでは元値の 倍に跳ね上がってしまいました。これでは、少額の商品を買った既存顧客の入札優先度が、高額商品を買った既存顧客よりも相対的に高くなってしまう可能性があります。

2. スマート自動入札が混乱する

Google の自動入札(コンバージョン値の最大化)は、「価値の比率」を基準にして入札単価を調整します。

  • **「乗算:」**であれば、常に「この既存顧客の取引は、元の売上に関わらず 倍の価値がある」という一貫したシグナルが送られます。
  • 「追加:¥30,000」では、上記のように比率がバラバラになり、システムがどの程度の優先度で入札をすべきか正確に判断できなくなってしまうため、入札の最適化が不安定になる可能性があります。

まとめ

元のコンバージョン値が**商品やサービスによって異なる(動的である)場合は、価値の比率を一定に保つために「乗算」**を使うのが、実務上は最も正確で安定した方法となります。

「追加」は、コンバージョン値が常に 円(例:資料請求、問い合わせ)で、そこに一律の価値を付与したい場合に限定して使うのが一般的です。

「追加」を使うとき

「一律の価値」を付与したい場合の妥当な金額は、あなたのビジネスの**「最終的な売上」「コンバージョンからの成約率」**から逆算して決めます。

これは、主に**「資料請求」「問い合わせ」「メルマガ登録」**など、まだお金が発生していない「リード獲得」のコンバージョンに適用されます。

逆算で決める「一律の価値」

妥当な金額を決めるための最も論理的な方法は、以下のステップで計算することです。

ステップ 1:最終的な売上(顧客生涯価値 LTV など)を把握する

  • ゴールとなる「成約(最終的な購入)」1件あたりの平均売上または平均利益を計算します。
    • 例: 最終的に顧客 人がもたらす**平均売上(または利益)**は ¥100,000 とする。

ステップ 2:コンバージョンから成約に至る「成約率」を把握する

  • 「資料請求」や「問い合わせ」をした人のうち、**最終的にどのくらいの割合で商品を購入してくれるか(成約するか)**を計算します。
    • 例: 資料請求を100 件もらっても、実際に商品を購入してくれるのは 5 人だった。
    • 成約率: 5%

ステップ 3:逆算して「コンバージョン 件あたりの価値」を算出する

  • ステップ の売上に、ステップ の成約率を掛け合わせます。

100,000×5%=5,000

  • 例(資料請求の場合):

この計算の結果、資料請求 件あたりの妥当な一律の価値は ¥5,000 となります。

なぜこの方法が重要なのか?

Google の自動入札システムは、この ¥5,000 という数字を元に、**「この資料請求の価値は 円だから、入札単価をこれくらいの金額に抑えれば採算が合うだろう」**と判断してくれます。

もし、すべての資料請求に適当に ¥10,000 の価値を付けてしまうと、実際は ¥5,000 の価値しかない資料請求にも高い入札単価を払うことになり、広告の費用対効果(儲け)が悪くなってしまいます。

実務では、過去のデータに基づいたこの逆算のロジックが、一律の価値を決める際の唯一の妥当な方法となります。