顧客が多いことはいいことか?

顧客が多ければ多いほど売上はあがる。
というのは常識でしょう。

実際には違います。逆効果になることもあります。

例えば、あるレストランが「とにかくお客様を増やそう!」と、
割引クーポンや広告に多額の費用をかけて新規顧客をどんどん集めます。
最初はお店が賑わい、売上も一時的に上がったように見えました。

しかし、実際にはスタッフの数やサービス体制が追いつかず、
料理の提供が遅くなったり、接客が雑になったりしてしまいます。
その結果、新しく来たお客様の多くが「もう二度と来ない」と感じてしまい、リピーターが全く増えません。

さらに、常連だったお客様も「最近サービスが悪くなった」と感じて、徐々に離れていってしまいました。
最終的には、集客にかけた費用ばかりが膨らみ、売上は思ったほど伸びず、利益はむしろ減ってしまいました。

これはただのたとえ話でしょうか?いいえ、実例があります。

1. マクドナルド日本の「100円マック」戦略(2000年代初頭)

概要
2000年代初頭、マクドナルド日本は「100円マック」などの低価格戦略を大々的に展開し、一時的に来店客数が大幅に増加しました。

結果
・客数は増えたものの、客単価が大きく下がり、売上総額は思ったほど伸びませんでした。
・さらに、低価格化によりサービスや品質が低下し、ブランドイメージが損なわれました。
・結果的に、リピーターやファンが減少し、利益率も悪化。のちに路線転換を余儀なくされました。


2. アメリカの「グルーポン」ブーム時のレストラン

概要
グルーポンなどのクーポンサイトが流行した際、多くのレストランが新規客獲得のために大幅な割引クーポンを発行しました。

結果
・一時的に大量の新規顧客が来店したが、ほとんどが「割引目当て」の一見客で、リピーターにならず。
・通常の価格で来ていた常連客が「損した気分」になって離れてしまうケースも多発。
・サービスが追いつかず、口コミ評価が下がる店も続出。
・最終的に、利益が減少し、閉店に追い込まれる店舗も多数出ました。


3. 日本の温泉旅館(格安バスツアー導入時)

概要
閑散期対策として、格安バスツアー客を大量に受け入れた温泉旅館。

結果
・客数は増えたが、格安プランのため客単価が低く、サービスの質も維持できず。
・本来のターゲットだった上質なサービスを求める顧客が離れてしまった。
・結果、ブランド価値が下がり、経営難に陥った旅館も。

このようなことを分からずに経営すると、
「もっと顧客を集めればいいんだ」
と思い込んで、もっと集客にリソースをつぎ込むことになります。

でも実際には穴の開いたバケツに水を注ぎこんでいるようなものなので、
水の量を増やしたとしても、何もたまらないことになります。

そんな場合はどこから改善していったらいいでしょうか?

4つの重要領域

事業には4つの重要領域があります。

まず売上に関係する3つの領域

売上=アクセス数 × 成約率 × 継続率


から解説します。

WEBマーケティング用語を使っていますが、アクセス数は見込み客の数と考えてください。
不勉強な経営者はこの数字ばかりを追いかけています。
たちの悪いことに、この数字は簡単に増やすことができるのです。

つまり、広告費をかければかけるほど、この数は増えます。
何の創造性も働かせずにできることです。

でも何の考えもなくビジネスがうまくいくわけはありません。
それにはやがて限界が来ます。

ビジネスのなかで、広告費が占める割合は非常に高いです。
何の考えもなしに数だけ集めるのは、失敗への道です。

というのも、多数のお客を集めてビジネスを成り立たせられるのは、大企業だけだからです。
言い換えると、かけたお金に対して、それ以上の売上をあげられるのは、大企業のモデルです。
つまり中小企業がまねをすると、かけたお金よりも少ない売上しか上げられません。
正確には、非常に薄い利益か、赤字になります。

一番最初、ビジネスを立ち上げるときにはアクセス数を稼ぐ考えは間違っていないのですが、
ある程度アクセスを集めたら、集めたアクセス数をどうやって収益化するかを考えなければいけません。

年商1億突破する企業と、そうでない企業の成約率の違いは、0.3%だけだといいます。

「成約率わずか0.3%の差」が、時間の経過とともにどれほど巨大な差(複利効果)を生むのか、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。

年商1億円に届くかどうかの分かれ目は、単発の成約数ではなく、そこから生まれる「再投資の余力」と「成長スピード」にあります。


1. シミュレーションの前提条件

比較しやすくするために、以下の条件で2つの会社を想定します。

  • 月間のアプローチ数(母数): 1,000人
  • 商品単価: 10万円
  • A社(成約率 1.0%): 標準的な企業
  • B社(成約率 1.3%): 1億突破する企業(差はわずか0.3%

2. 1ヶ月目の結果

まずは、最初の1ヶ月でどれくらいの差が出るかを見てみます。

項目A社(1.0%)B社(1.3%)差分
成約数10件13件+3件
売上100万円130万円+30万円

この時点では「30万円の差」に過ぎません。「0.3%の差なんて、そんなものか」と感じるレベルです。


3. 1年後のシミュレーション(複利の成長)

ビジネスが成長する企業は、増えた利益を「広告費」や「改善」に再投資します。

ここで、「売上の20%を翌月のアプローチ数増(広告費など)に回す」と仮定して、12ヶ月後の姿をシミュレーションします。

12ヶ月後の月商比較

  • A社(1.0%)の場合:少しずつ伸びますが、爆発力には欠けます。12ヶ月後の月商は約 160万円。
  • B社(1.3%)の場合:わずかな余剰利益が毎月のアプローチ数を押し上げ、雪だるま式に増えていきます。12ヶ月後の月商は約 320万円。

年間の累計売上

1年間のトータルで見ると、その差は歴然とします。

  • A社(累計): 約 1,500万円
  • B社(累計): 約 2,500万円

🟨 Q|この差はどこで生まれたのか?

この0.3%の差は、単なる売上の差ではなく**「経営の選択肢」**の差になります。

  1. 利益率の劇的な向上:固定費(家賃や人件費)が同じであれば、0.3%分の売上アップは、そのほとんどが「純利益」に乗ります。
  2. 広告の限界CPA(顧客獲得単価):成約率が高いB社は、A社よりも高い広告費を払っても利益が出せます。その結果、市場のシェアをB社が独占し、A社は集客できなくなるという「勝者総取り」が起こります。
  3. LTV(顧客生涯価値)への波及:成約率が0.3%高いということは、それだけ「顧客の課題に刺さっている」証拠です。これがリピート率にも影響すれば、数年後にはA社が年商2,000万で足踏みしている間に、B社は年商1億円を軽々と突破します。

結論として、成約率を改善することは、アクセス数を改善するよりもずっと費用対効果が高くなります。
ただし、それは顧客数が手に負える範囲である場合のみです。

売り上げの方程式のなかで、もっとも費用対効果に優れている箇所です。
その理由は2つ。

  • 新規客を獲得するためには多くの費用が掛かるが、顧客維持にはそのコストの5分の1で済むから。
  • 顧客維持が高まると、安定した売り上げと、より高額な商材を購入してもらえる可能性が高まるから。

一番経営で力を入れないといけない部分であり、一番見逃されている部分です。
センスがある人は、「常連さんがいるから商売をやっていけてるんだ」というふうに、
常連を大事にしていますが、一般的に起業家・経営者というものは、新し物好きです。
なのでどうしても新しいキャンペーン、新しい商品を扱いたくなってしまいます。

しかし今言ったように、新しい顧客を獲得するのは多大な費用がかかります。
それでいて、初回の購入で得られる利益はほとんどありません。
いや、あればいいほうです。多くは赤字になるでしょう。
黒字になるのは運がいいか、大企業だけです。

大企業は規模の経済により、低価格で提供できるから、それが成り立ちます。
中小企業にはそれは無理です。

例えば月額10000円のフィットネスジムを想定してみます。


  • 商品: 会員制サービス(月額 10,000円)
  • 集客: 毎月 100人の新規入会(広告費をかけて一定数を確保)
  • 比較ポイント: 「解約率」が少し違うだけで、1年後の現金の残り方がどう変わるか。
比較対象解約率(月間)状態
A店(放置型)10%入会させっぱなし。フォローなし。
B店(丁寧型)5%声掛けやLINEフォローを徹底し、退会を防ぐ。

毎月100人ずつ入会しても、解約率が違うと「在籍人数」にこれだけの差が出ます。

経過月A店(解約10%)の在籍数B店(解約5%)の在籍数
1ヶ月目100人100人0人
12ヶ月目718人919人+201人

⭐1年後の「月商」比較

  • A店: 718万円 / 月
  • B店: 919万円 / 月この時点で、月商に約201万円の差がつきました。

「解約率を5%下げただけ」で、オーナーの手元に残る利益は 約2倍 になりました。

なぜ多くの経営者は「新規」に走り、「維持」を忘れてしまうのでしょうか?
それは、「入会した瞬間の100万円」は目に見えるけれど、「辞めていく人の損失」は目に見えないからです。

しかしこれも顧客数多すぎ問題の解決にはなりません。
そもそも多すぎるのだから、顧客維持しても結局対処しきれません。
なので今回の核心は次の、最後の重要領域にあります。

業務運営

そして問題の最後の領域、業務運営です。

これは売上に直接貢献するところではありません。
しかしこの能力が実質的なビジネスの潜在能力を示しています。

つまり、業務運営能力がカバーできる範囲が、年商の限界ということです。
華やかな【売上】という方程式に魅了されるばかりで、こちらの方へ眼を向ける人がいないのは、
それがあんまりおもしろくないからでしょう。

何せ目に見えるものではありませんし、
まるで前進しているように思えないからです。
(思い出してください、起業家・経営者は新し物好きです。)

そして地味な作業ですし、すぐに成果がでません。
なにより見て見ぬふりしてきたものを直視しなければなりません。

僕もあります。
手元がとっ散らかって、その辺に資料や本を投げっぱなしにした挙句、何が何だか分からなくなることが。
整理整頓しないと進まなくなるからやらないといけないのですが、どんどん後回しになります。
そのうちどうしようもなくなって、一定の許容範囲を超えて、やりだすのです。

本当はこまめにやったほうがいいことは確かなんですが、どうしてもやる気になりません。
でも結局やらなければいけないんです。

僕の身の回りのことならば被害を受けるのは僕だけです。
しかしことビジネスならば、被害を受けるのは社長だけというのはあり得ません。
社員もそうですが、取引先だって迷惑をこうむります。

具体的に何をすればいいかというと

  • 社内連絡のひな型を作る
  • ツールや管理画面を整理する
  • 進捗報告を自動化する
  • 定例会議の進め方を見直して時間を短縮する

などです。

明確にサインが出る前にやるべきことではありますが、
人間はそう都合よく備えることができる存在ではありません。

けれども明確な危険信号が出ているならば、
それはやるべきです。
誰かがやってくれたりはしないのですから。