ベトナム戦争の敗北と、ほとんどの企業が抱える問題の共通点

こんにちは、阿部隆宗です。

今回はベトナム戦争におけるアメリカの失敗の原因と、
うまくいかないほとんどの企業が抱える失敗の原因は同じであるという話をします。

ベトナム戦争でアメリカは何をしたかったのか?

ベトナム戦争でのアメリカ軍は、世界最強の軍隊であり、歴史上のどんな軍隊よりも優れていました。
兵站は滞りなく、戦場ではほぼ完ぺきに勝利を納めました。

それにも関わらず、最終的に勝ったのは北ベトナム軍です。

なぜでしょうか?
その原因について、実は多くの研究者の間で共通して、シンプルな結論が出ています。

それは、

ベトナム戦争でアメリカは、自国が何をしたいのか分からないまま闘っていたため負けた


ということです。

もちろん「共産主義の拡大を止める」という目標をもって介入したことは確かです。
そういう意味では何をしたいのかは分かっていたとは言えます。

しかしそれは、why(なぜ戦うのか?)の答えにはなっていても、how(どうやって達成するか?)の答えにはなっていませんでした。

例えば:

  • ベトナムを分断したまま維持するのか、統一するのか?
  • 北ベトナムを倒すのか、封じ込めるだけなのか?
  • 南ベトナム政府が腐敗していても支援し続けるのか?
  • 何年戦えば「共産主義を止めた」と言えるのか?
  • どの時点で撤退できるのか?

このような疑問に何も答えていませんでした。
つまり、

具体的に何を達成すれば勝利なのか、そのために何をすべきかが明確ではありませんでした。

現場の兵士たちは、
「なぜここにいるのか?」
「何のために戦っているのか?」
を理解できず、士気が低下しました。
(当たり前です。何せ上層部もわかっていなかったのですから)

対照的に、北ベトナムは
「外国勢力を追い出し、国を統一する」
という誰でも理解できる明確な目標を持っていました。

その結果は先ほども言った通りです。

世界最強のアメリカ軍が失敗したのは「戦略が欠如していたから」
ということでしょうか?

これは半分あっています。
もう半分は、そもそも戦略を決める前に決めるべきもの決めていなかった、
ということです。

戦略の前に決めるべきもの

戦略について書かれた本は山ほどあります。

戦略とは、一言で言うと、「目的達成のための道筋」のことです。

もうすこしかみ砕いて言うなら、
「自分が目指すゴールにたどり着くために、
どのような方法や順番、資源の使い方を選ぶかをあらかじめ考えて決めること」
です。

まず前提として、現実的に、使えるリソースというのは限られています。
ヒト・モノ・カネ・時間のリソースは限られているので、
なにかを成し遂げるために、無限のリソースを使うことはできません。

だから目標を達成するためには、リソースの配分を考えなければいけません。

それを考えるのが戦略です。

戦略を定めることで、

  1. 無駄な努力を減らせる
    目的に直結する行動だけに集中できるので、時間やお金、労力を効率よく使えます。
  2. 迷いが減る
    何をすべきかが明確になるので、途中で悩んだりブレたりしにくいです。
  3. チームで動きやすくなる
    みんなが同じ方向を目指せるので、協力しやすくなります。
  4. 進捗や成果を測りやすい
    目標と手段がはっきりしているので、うまくいっているかどうか判断しやすいです。

というようなメリットがあります。

戦略について軽くまとめるとこんな感じです。

このように、戦略の大切さについて触れられた本はたくさんあり、
それこそ世の中の多くの経営者がそれについて学んでいるでしょう。

それにもかかわらず、どうして、それこそMBAを取ったような経営者たちが、
まるで戦略のないような、めちゃくちゃな経営をすることがあるのでしょうか?

実はすでに答えは書かれています。

それは目標がなかったからです
正確に言えば、明確な目指すべき未来の理想の姿がなかったからです。
その目指すべき理想の未来の姿のことを、【ビジョン】と言います。

ビジョンとは

「船頭多くして船山に上る」

という言葉があります。
いくら優秀なトップを集めても、
それぞれのトップが目指すべき方向が違っていたら、
リソースの無駄遣いです。

リソースを無駄遣いするのは優れた戦略ではありません。
よってその企業は戦略的な企業ではなく、
リソースを集中すべき時、場所に集中できない企業です。

先ほど戦略とは一言で言うと、「目的達成のための道筋」と言いました。

つまり、戦略を作るためには、まず目的を定めなければいけません。
それも、ただの目的ではいけません。
それを達成することが魅力的で、組織全体を引き上げられるような目的でなければいけません。

それがビジョンです。

優れたビジョンを設定することで、

  • 組織の構成員が通常では考えられないほどの努力を引き出す。
  • チームに一体感をもたらす。
  • 問題が起きたとき、いちいち指示しなくとも、自分から解決策を創造するようになる。

といったメリットがあります。

例えばヘルメットを作る人のことを考えます。

ヘルメットを作るとは、ビジョンを持たない人から見れば、なんでもないただの作業です。
しかし、ビジョンを持つ人から見れば、それは人の命を救う作業です。

———以下『ビジョナリーカンパニーZERO』著:ジム・コリンズ、ビル・ライアー 訳:土方奈美 出版:日経BP
より引用

モチベーションは自分の仕事を全体の目標とどれくらい結び付けて考えられるかで決まる。
定型業務でもそれは変わらない。

私たちがジロスポーツ・デザインを訪問したとき、組立ラインの作業員が誇らしげに掲示板を刺した。
そこには自転車で大事故を起こしたとき、ジロのヘルメットによって深刻な脳損傷を免れた人たちからの手紙が貼ってあった。
あるユーザーはこう書いていた。

「ありがたいことに、粉々になったのは私の頭ではなくヘルメットだった。ジロがあってよかった。」

「私たちはこういう仕事をしているんだ。単にヘルメットを作っているだけじゃない。
多くの人により良い人生を届けている」
と作業員は語った。

全体目標を明確に伝え、共有することは、非常に大きな力になり、
会社全体のモチベ―ションの支柱にもなる。

まずビジョンがあり、そこから戦略があり、そしてそれを実現するための戦術があります。
その逆ではありません。

いくら優れた戦術があっても、ビジョンがなければ、それは持続的な成長につながりません。
一時の優位を保てるにすぎません。

いくら優れた戦術があっても、ビジョンのない企業がどんな末路をたどるのかは、
世界最強のアメリカ軍がたどった失敗を見れば明らかです。

ビジョンとは、限りあるリソースを余すところなく活用するために必要不可欠な要素です。

2026年1月21日、追記:ビジョンの作り方についての記事をアップしました。