ハリネズミの概念とビジョン

こんにちは、阿部隆宗です。

以前にビジョンについての記事を書きました。
以下の2つです。

コリンズ・ポラス式ビジョンの作り方

こんにちは、阿部隆宗です。 以前ビジョンが欠けた組織がどうなるかについての記事を書きました。しかし、ではどうやってビジョンを作ればいいのかをまだ解説していません…

これら二つの記事でビジョンについて解説させていただいたのですが、
実はビジョンとセットでもう一つ解説しなければならないものがあります。

それが「ハリネズミの概念」です。

ハリネズミの概念とビジョンはセットで運用するものです。
どちらかが欠けてはいけません。

そこで今回は「ハリネズミの概念」について解説していきます。

ハリネズミの概念

「ハリネズミの概念」は、ジム・コリンズがその著書、
『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で提唱した概念です。

ちなみに「ビジョン」もジム・コリンズとジェリー・ポラスが、
『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(1994年)で提唱しました。
正確にはビジョンという言葉を経営学において単なる「目標」から独立した言葉へと
進化させたのがこの2人ということです。

話を戻して「ハリネズミの概念」とは何かを説明していきます。

ハリネズミの概念とは

  1. 自分たちが情熱を持てること
  2. 世界一になれること
  3. 経済的原動力になること

の3つが重なる領域のことです。
ハリネズミは物事を単純化し、あらゆる事柄を単一の原則に基づいて考えます。
つまりハリネズミの概念を一言で言うと、

「自分たちが最も輝ける一点に絞る戦略」

あるいは

「自分たちの”究極の強み”を見極めて集中する考え方」

ということです。

その「一点」には公称はありませんが、「スイートスポット」などと呼ばれることもあります。

ハリネズミの概念とビジョンはセットで考えるべきです。

ハリネズミの概念は「自分たちが何者で、何に集中すべきか」を現実的に捉えるものです。
ビジョンは「その強みや情熱を生かして、どんな未来を描くか」という理想像です。

ハリネズミの概念を定めることで、「何をすべきでないか」が現実的に見えてきます。
そしてビジョンを定めることで、「どこへ向かうべきか」を思い描くのです。

つまり、

【ハリネズミの概念】+【ビジョン】=「本当に実現できるワクワクする未来」

が実現できます。

どちらかが欠けていると?

ハリネズミの概念の明確化により、自分たちがやるべきでない領域が分かります。
つまり、これがないということは、リソースの無駄遣いをするということです。
そうなると何もかもが中途半端に終わってしまい、一貫性がなく、何も実らず終わってしまいます。

そしてビジョンが無い場合、日々の活動が目的化し、モチベーションが生まれにくくなります。
不確実な現代社会ではイノベーションは必須なのですが、ビジョンがないと現状維持に陥りやすく、
イノベーションのための破壊と創造が両方とも行われません。

つまり成長が止まります。

表にしてまとめると👇

集中の概念で理解する

ハリネズミの概念は、組織が現実的にリソースをどこに集中すべきかを教えてくれるフレームワークです。
ビジョンは、そうして集めたリソースを、どこへ向かって集中するべきかを教えてくれるフレームワークです。

あえて【集中】という言葉を重複して使いました。

これは両者のフレームワークがリソースを【集中させる】という点では共通しているためです。

ただ、ハリネズミの概念は「できる幅を狭める」という意味での集中であり、
ビジョンは「リソースをどこへ振り分けるか」という意味の集中です。

もう少し詳しく言うと、
ハリネズミの概念は幅を狭めることでエネルギーの分散を防ぎます。
つまり、できることはたくさんあるのですが、「やらないこと」を決めて、一点突破するということです。

ビジョンは、集めたリソースを、ベクトルを定めることで、エネルギーが最大化されるということです。

ハリネズミの概念集中の領域を定める
ビジョン集中の方向を定める

ドラゴンボールで例えると、「か・め・は・め」でエネルギーを集中し、「破ー!」で敵に放つイメージです。
(わかる人にはわかる)

情熱の概念の相違点

ハリネズミの概念の概念に置ける情熱は、現実的な事業領域を選ぶための情熱で、
「自分たちが心からわくわくし、やり続けられていること」です。

ビジョンに置ける情熱は、存在意義・使命的な情熱であり、
成長の方向性の原動力となるものです。

この二つは別のモノではなく、ビジョンの情熱を源泉として、ハリネズミの情熱があります。
ビジョンの情熱は抽象的で、ハリネズミの情熱は具体的です。

ハリネズミの情熱が深まってビジョンになるのではありません。
ビジョンの情熱をどこで発揮するかがハリネズミの情熱です。

ハリネズミの情熱はすでに仕事として現れています。

自分たちが自然にやれていることをただ記録・観察して分析すればよい。
それをもとに、ビジョンの情熱として、抽象化すればいい。
もしも現状が全くわくわくしていないとしたら、それは情熱がない。

もっと情熱を持てそうなビジネスをするべきです。

その際のヒントはどんな顧客を相手にするかです。
ビジネスにおける情熱は、顧客と切り離せません。

ハリネズミ的情熱を見つけ出す現実的な手法としては、
嫌いな顧客の共通点を見つけることです。

なぜなら人間の損失回避性により、人のイヤなところは「イヤでも」目につくからです。
つまり見つけやすい。

そうした相手にしたくない顧客を排除していった先に、
望ましい顧客像が見えてきます。

ただし、できれば実際に付き合っていてうれしい顧客を元に、
付き合うべき顧客像を作っていったほうがよいでしょう。
なぜなら「理想の顧客」像をつくると、
現実から乖離してしまう可能性があるからです。

3つの円の求め方

ここまででハリネズミの概念の概念とビジョンとの関係について、
いろんな角度から理解を深めてきました。

ここではいよいよ3つの円をどうやって埋めていくかを解説します。

ただこの作業は実際に自分たちでやることに意味があるのであって、
解説できるようなことはあまりないです。

情熱をもって取り組めること

情熱を導き出すには、次の問いに答える必要があります。

「もしお金が一切手に入らなくても、情熱を注ぎ続けられる活動は何か?」

ずっと続けていても飽きない、常にベストを尽くせるような分野を見つけてください。
常にベストなら当然仕事のパフォーマンスも最高となります。
それが情熱を注ぐべき場所です。
というより、情熱をもたらし続けてくれる活動といったほうがいいかもしれません。

自社が世界一になれること

世界一になれることを導き出すには、次の問いに答える必要があります。

「自分たちがどれだけ努力しても、絶対に世界一になれない分野はどこか?
逆に、自分たちのDNAに刻まれた強みを生かせば、誰にも負けない分野はどこか?」

世界一になれることとは、自分たちのコアな能力・スキルのことです。
自分たちの本当の強み、誰にも負けないところを見つける必要があります。

経済的原動力になること

これは少しややこしいかもしれません。
字面からは自社の強みのこと?あるいは資産?
と誤解する可能性があります。

しかしこれは、キャッシュフローや利益を効率的に生み出すための「経済指標」のことです。

つまり、あえて正確ではない表現を使えば、「数値目標」のことです。
イメージしやすいように言いましたが、実際のところ数値目標ではありません。
「たった一つの優先すべき数字」のことを、経済的原動力と呼びます。

コリンズは、自社の収益性に最も劇的な影響を与える「Xあたりの純利益」という形を導き出すべきだと説いています。

例えばサウスウエスト航空は、
「機体当たりの利益」
を自社のたった一つの経済的原動力としてとらえました。

このたった一つの指標を全社で追い求めることで偉大な企業となったのです。

「売り上げ」
「利益率」
「顧客数」

など追いかけたい指標はたくさんあります。
しかし、たった一つの指標を改善することに注力することで、
迷ったときの道しるべとなるのです。

それを見つけ出すための問いはこれです。

「もし、たった一つの指標を改善するだけで、
事業が劇的に成長するとしたら、その指標は何か?」

ビジョンづくりの順番

ここまでをまとめると、ビジョンづくりの順番は次のようになります。

情熱(ビジョンの種)
👇
ハリネズミの概念
👇
ビジョンの言語化

なぜこのようにサンドイッチ構造になっているのか?

概念的には、まず自分たちができることを絞り(ハリネズミの概念)、
それの範囲で実現できる、ワクワクする目標は何かを決めます(ビジョンの言語化)。

だからハリネズミの概念→ビジョンの順番で作るのが自然です。

しかし、ハリネズミの概念にも情熱の要素はあり、ビジョンは情熱の源なので、
情熱に関してはまずビジョンから始めるということが起こります。

最初にビジョンから始めると、非現実的な理想、
つまり自分たちが到底実現できない目標を掲げてしまうことになりかねないからです。

だからきっちり自分たちが何ができるのか、何をし続けられるのかを確かめてから、
それを振り向ける先を決める必要があります。

具体的なステップ

  1. 情熱の棚卸:何にワクワクするかのエピソードを抽出する
  2. 情熱を「世界一」になれる分野で生かせるか?
  3. 経済的に持続可能か?
  4. 情熱・世界一・経済的の3つの分野で重なった部分で、どんな未来が実現できるかを言語化(ビジョン)

情熱の棚卸は、コアバリューやパーパスまでいかなくてもいいです。
(コアバリューやパーパスが何かはビジョンについての記事を参照)

具体的なエピソードから、ここに注力できるという現実的な部分が見えてくればいいです。

それがハリネズミの概念の情熱です。
あとはハリネズミの概念の残りの二つの領域を導き出して、
「スイートスポット」を割り出せたら、
それを基にどんな未来が実現可能かを割り出します。

これが持続的成長のための基幹となる部分となります。

今回はここまで。