伝説のコピーライターがありふれたビール会社を業界1位にした方法

20世紀初頭にクロードホプキンスというコピーライターがいた。

彼は後に広告の神様と呼ばれる人物だ。
その彼がシュリッツビールを半年で業界一位にした秘密を今回記事にする。

その方法は品質を高めることではない。
コピーライターがそんなことはできない。

その方法は広告を大量投入するのでもない。
当時シュリッツビールを販売していた会社は業界8位だったのだから、
そんなお金はない。

そして実は隠れた差別化できる要素がその商品にあったわけでもない。
シュリッツビールはごくごくありふれたビールであった。

しかし実は本質を突いた手法であった。

シュリッツ社を業界1位に押し上げた秘密

1920年代初頭、10社ほどの醸造会社が競い合っていた中、シュリッツビールという会社があった。その会社は業界8位であった。

それがあるメッセージを打ち出しただけでわずか半年で業界1位になった。
どんなメッセージだったのか?

それは自社のビールがどうやって作られているかということだった。

美しいミシガン湖のそばにある工場。
しかしシュリッツビールはその水ではなく、わざわざ1500mの穴を掘り、最適なミネラルを含有した水を使用していた。

その水は醸造する前に、2760℃まで熱され、再び冷却して液化する。
そしてそれを3回繰り返す。
不純物を完全に除去するために。

一口飲んでみる。そこから生まれる豊かな味と口当たり。
それを生み出すのは5年かけて1623回の実験を行い発見した醸造酵母菌の元菌(がんきん)だ。

ビールを入れるビンは870℃の蒸気に当てられる。
そうしないとビールの味に影響を与える可能性のあるバクテリアや微生物がすべて殺菌できないからだ。

ビン詰めすれば終わり、ではない。
純粋で豊かな味に仕上がっているか?一度の醸造ごとに必ずテイスティングをされる。

ビールを飲む人のうちどれだけがこのことを知っていただろうか?
まさに驚くべき工程である。

さらに驚くべきは他社も同じことをやっていたということだ。

シュリッツビールが他社とただ一つ違っていたのは、このことを広告で打ち出したということだった。

何をやったのか?

現代ではこれを先制のマーケティングと呼ぶ。

【ハイパワーマーケティング】の著者であり、
全米でも有数のコンサルタントであるジェイエイブラハムが提唱した概念だ。

先制のマーケティングとは何か?

業界では当たり前となっているが、
顧客には知られていない手法を、
競合よりも先にアピールすること

である。

ここにいわゆる差別化というものの本質が隠されている。

つまり、差別化とは商品そのものの違いは対して重要ではない。

重要なのは、【顧客にとっての違い】である。

そのことを先制のマーケティングは示している。