商品開発はプロダクトアウトでするべきか、マーケットインでするべきか?
こんにちは、阿部隆宗です。
今日は商品開発のアプローチとして有名な、
プロダクトアウトとマーケットインの使い分けについて語ろうと思います。
最初に結論から言えば、ビジネスではどちらか一方ではなく、
両方を使うことが重要です。
ただし、今回語るのは一般的なそれとは違い、
現実的な側面からの運用方法となります。
まずは一般的なプロダクトアウト、マーケットインについて紹介します。
プロダクトアウト、マーケットインとは?
商品開発・事業展開の仕方には2つあります。
プロダクトアウトとマーケットインです。
プロダクトアウトは一般的なビジネスの開発手法で、
まず「こういうものが欲しいだろう」という商品を開発してから売ることです。
マーケットインは逆に、まず顧客のニーズを発見してから商品を作っていく手法です。
2つの長所と短所をまとめると、次のようになります。
| 長所 | 短所 | |
| プロダクトアウト | イノベーションを生む 差別化が強い 高い利益率 情熱がある | 高リスク 時間がかかる スケールが難しい(質を落とさずに大きくすること) |
| マーケットイン | 成功確率が高い 効率的 データに基づく意思決定 | イノベーションが生まれにくい 競争が激しい 利益率が低い |
🚀スティーブ・ジョブズの言葉
「顧客は、それを見せるまで、
何が欲しいか分からない」
「市場調査はしない。ヘンリー・フォードも言っただろう。
『顧客に何が欲しいか聞いたら、もっと速い馬、と答えただろう』」
含意:革新的製品は、プロダクトアウトから生まれる。
表にまとめた通り、プロダクトアウトよりも、マーケットインのほうが成功率は高いです。
それもそのはずで、マーケットインはすでに需要があるところを探して、
それに合うものを開発するのだから、ある意味で成功は約束されているようなものです。
それに対し、プロダクトアウトは需要があるかないか分からないのに、
顧客はこれが欲しいはずだと思って、勝手に商品開発するのですから、
成功率は低いはずのは当然です。
実証研究
Cooper & Kleinschmidt (1987)
N = 203の新製品
発見:
・マーケットイン:成功率 58%
・プロダクトアウト:成功率 21%
ただし:
・プロダクトアウトの成功時のリターンは3-10倍
・マーケットインは安定的だが革新は少ない
CB Insights (2021)
失敗したスタートアップ上位10原因
1位(42%):市場ニーズがない(プロダクトアウトの失敗)
2位(29%):資金切れ
3位(23%):チームの問題
失敗例
有名企業だろうと、プロダクトアウトは失敗するし、
マーケットインだからと言って必ず成功するとは限りません。
以下はその実例です。
⭐プロダクトアウト(Google)
Googleの発想:
・「AR(拡張現実)グラスは未来だ」
・技術的には革新的
問題:
・顧客が求めていない
・プライバシーの懸念
・社会的に受け入れられない
結果:
・2年で一般販売中止
・10億ドル以上の損失
⭐マーケットイン(コカ・コーラ社)
市場調査:
・盲目テストでNew CokeがPepsiに勝つ
・20万人にテスト
問題:
・既存顧客の感情的つながりを無視
・ブランドの本質を見落とす
結果:
・79日で撤回
・マーケティング史上最大の失敗の一つ
歴史的経緯
従来はプロダクトアウト型が主流だった
20世紀中盤までは、プロダクトアウト型が主流でした。
それは自社の技術力・生産力を起点に、
「いいものを作れば売れる」という発想のもとで作っていたからです。
そして、そのアプローチはその時代は正しいものでした。
というのも、市場が未成熟で、商品そのものが不足したいたために、
「作れば売れる」状態であったからです。
しかし市場が成熟してくると、消費者のニーズが多様化・細分化されます。
また、企業の競争力が上がり、「いいもの」のレベルが上がるようになったため、
それプラスアルファの要素が必要になりました。
これが、「顧客が欲しいものを作る」
つまり、マーケットイン型の商品開発が行われるようになった理由です。
マーケットインの限界
マーケットインは「顧客の声」や「既存ニーズ」に応えることでヒット商品を生み出してきました。
しかし、それでは革新的な商品を生むことはできません。
つまり、社会の進歩に、人類の進歩に必要な、革新的な商品を生むことはできません。
なぜなら誰もそれを欲しがっていないからです。
それを実現できるのは、やはりプロダクトアウト型の商品開発だけでした。
スティーブ・ジョブズはそれの天才でした。
実際にアップルコンピュータを作ったのは、
スティーブ・ウォズニアックです。
ではスティーブ・ジョブズは何をしたのか?
アップルコンピュータを人々がお金を出して買いたくなるようにしたのです。
現代的アプローチ
現在では、この両者の考えを行ったり来たりしながら開発を進めるのが主流です。
つまり、まず小さく商品を作り、顧客の反応を見て、
フィードバックを受けて、商品を素早く改善する。
このように商品開発→顧客の反応を見る→商品改善
のプロセスを繰り返すのが現在の手法です。
と、ここまでが一般的なプロダクトアウト、マーケットインの理論です。
ここからが僕独自の視点となります。
と言っても、今の理論を否定するものではありません。
ただ、現実的に多くの企業では、この理論だけでは不十分な点が多くあると思うので、
それを補うような視点を提供したいと考えています。
ありふれた中小企業の現実的な運用
先ほどまでのプロダクトアウト、マーケットインの理論は、
スタートアップの現場から生まれた理論です。
つまり、最初から革新的な商品を作ろうとしている人たちです。
それが応用されて、現在は大企業などにも適用されています。
大企業なら、革新的商品を作るだけのリソースもありますから?
ではありふれたサービスしか持っていない大多数の中小企業には無用の理論なんでしょうか?
そうならないように、これから解説していきましょう。
中小企業の応用方法
理想の世界では人はなんでもできるから、どんな商品・サービスでも扱うことはできます。
しかし、現実はそうではありません。
人には才能の偏りがあり、
能力の偏りがあり、
資源の偏りがあります。
多くの企業ではまず自社の商品・サービス・能力が存在しています。
よって必然的に、形としてはマーケットインではなくプロダクトアウトとなります。
ではそれらの企業は運任せに経営するしかないのでしょうか?
売れるか売れないか、運を天に任せるしかないのでしょうか?
売れていないのは、運が悪いからでしょうか?
違います。
売れていない理由は、ズバリ売り方が下手だからです。
(当たり前ですが製品自体は悪くない場合限定です)
顧客となるであろう人に、その価値を届けられていないことが、
売れていない最大の原因です。
プロダクトアウトをするには、マーケティングの能力が必要です。
マーケティングとは、一言で言えば需要創造です。
特に、まったく新しい商品ではなく、世の中でありふれている商品が売れないのは、
マーケティングの能力が足りないからです。
マーケティングの基本原則は、「競争のない市場で勝負せよ」です。
しかし、現実は99%の企業が競争市場で戦わねばなりません。
ただし、ありふれていることは悪いことではなく、
確実にニーズが存在しているということでもあります。
つまりまったく見込みがないわけではないのだから、
あとは「欲しい」と思ってもらうだけです。
能力が同じなら、人は自分が好きな人、信頼する人に仕事を依頼します。
信頼されるためには、その分野のエキスパートとみられる必要があります。
そのための手法が、ポジショニングです。
しかしここで終わってはいけません。
こうしてつかんだ顧客を元に、今度はマーケットインで商品を開発します。
ただしこの場合のマーケットインは、利益率が高くなります。
なぜなら、これは新規獲得ではなく、既存客へのアップセル・クロスセルであるためです。
そして顧客との信頼関係を元にしているので、競合の参入障壁は極めて高い。
このプロダクトアウト→マーケットインの流れをつなぐのは、
顧客自身の根源的欲求です。
というのも、基本的に根源的欲求はなくなることは無いからです。
例えばウェブサイト制作を請け負っているとして、
プロダクトアウトで終わったら、そこで関係は終了します。
しかし、顧客の本当の欲求、つまり、
「売上を上げたい」という欲求に事業をフォーカスすれば、
ウェブサイトだけでなく、さらにその先のサービスも展開できます。
これが、競争の激しい現代社会で、中小企業が生き残るための、理想的なビジネスの流れです。
