SWOT分析の論理的矛盾点。強み弱み・脅威機会は相対的なモノ
こんにちは、阿部隆宗です。
戦略構築のため、一般的に使用されるものとして、
- PESTt分析
- ファイブフォース分析
- VRIO分析
- バリューチェーン分析
- etc...
などがあります。
そして最もよく使われるものとしてSWOT分析があります。
しかしSWOT分析にはある致命的な問題が存在します。
そしてそれは他のフレームワークにも同じようなことが言えます。
今回はSWOT分析の問題点を中心に、一般的なフレームワークの問題を解説していきます。
SWOT分析の論理的矛盾
SWOT分析は事業を強み・弱み・機会・脅威の4つに分けて分析し、
有効な戦略を構築するためのもの、とされています。
しかしSWOT分析にはある有名な批判があります。
それは分析して終わりになりやすいということです。
- 項目を列挙するだけで、優先順位が決まらない
- 何が本当に重要かが見えにくい
- 結局「で、どうするの?」が答えられない
などです。
一言でまとめると、
戦略構築のためのフレームワークなのに、戦略構築ができない
ということです。
その原因は何でしょうか?
SWOT分析に習熟していないからでしょうか?
それともSWOT分析だけでなく、組み合わせに必要なフレームワークが存在し、
それと合わせなければ戦略構築できないからでしょうか?
いいえ、違います。
原因は、そもそもSWOT分析とは
戦略を立ててから、事後的にその戦略を検証・整理するためのツール
だということです。
つまり、論理が逆で、SWOT分析の結果で戦略を立てるのではなく、
戦略を立ててから、その戦略をSWOT分析する、ということです。
実際、中小企業がSWOT分析をやると、弱みと脅威だらけです。
これは多くの中小企業がやっている事業戦略が、
そもそも間違っているからです。
そういう意味で、SWOT分析は価値があるのかもしれません。
つまり、
<今やっている戦略はこのように弱みと脅威だらけの愚かな選択なので、
今すぐ戦略を変えるべきである。>
というシグナルはSWOT分析によって受け取れる、ということです。
ただしどんな戦略がいいかは分かりません。
ここでいったん、戦略とは何かを整理してみましょう。
多くの人は戦略を、単なる長期的な施策、としか見ていないから、
「戦略構築」とは何かが分からないのです。
戦略とは?
戦略とは、
<不確実な環境の中で、制約とゴールを前提に、
不可逆な選択の優先順位を決めること>
です。
分かりやすく解説します。
「不確実な環境」とは、未来は誰にも分からないという意味です。
「制約とゴールを前提に」とは、使えるヒトモノカネ時間は限られているので、
その中で何を達成したいかを決めるという意味です。
「不可逆な選択の」とは、
一度決めたら簡単には取り消せない決断、という意味です。
特にビジネスで決断に迷うような選択は、
後から取り返せない、埋没費用(サンクコスト)となるので、
慎重な決断が必要です。
「優先順位を決める」とは、
制約があって全部はできないから、何をやるかを決めておくということです。
これを元にすると、戦略の本質とは、
<選択と集中>
であり、
戦略を決めるとは一言で言うと、
「何をしないか決めること」
となります。
これをさらに言い換えると、戦略を決めるとは、
選択の基準を定めること
となります。
この「基準」という言葉が重要です。
ここにSWOT分析の問題の本質が隠れています。
戦略とは何か?「基準を定めること」です。
SWOT分析によって、強み・弱み・機会・脅威に分類できるのはなぜか?
<基準があるから>です
よって、SWOT分析を戦略構築のために用いるとは、
<基準を定めるために、基準を定めて分析する>
という行為に他なりません。
これは論理学的に循環論法と言って、
結論を証明するために、その結論自体を前提として使ってしまう、
論理的誤謬です。
よってSWOT分析を戦略構築のツールとして使うことは、
論理的に成立しません。
そして同じようなことは他のツールにも言えます。
はい、本質的には同じ問題を抱えています。
各ツールの循環論法
ファイブフォース分析
- どの業界・市場を分析するかを決めるには、すでに「どこで戦うか」という戦略的仮説が必要
- つまり戦略があって初めて分析できる
バリューチェーン分析
- 自社のどの活動が「強み」かは、どの顧客にどの価値を提供するかが決まって初めてわかる
- 戦略なしに「強い活動」は定義できない
VRIO分析
- 何が「価値ある資源」かは、どの市場で戦うかによって変わる
- 戦略が先にないと、価値があるかどうか判断できない
PPM
- 事業を「花形」「負け犬」と分類するには、何を目指すかが決まっていないと基準が定まらない
つまり
戦略構築のためのフレームワークと呼ばれるものは、ほぼすべて循環論法の問題を抱えている
といえます。
ではなぜこれだけ普及したのか?
おそらく
- コンサルタントが「ツールを売る」必要があった
- 経営学の教科書が「手順を教える」必要があった
という供給側の都合が大きかったのではないでしょうか。
本質的な結論としては、、
戦略は分析から生まれるのではなく、経営者の仮説と直観から生まれる。
フレームワークはその仮説を検証・整理するためにある。
ということになります。
弱みや脅威で勝つ戦略を作り上げる
今までSWOT分析などを戦略構築の最高のパートナーである、
と思っていた方はショックを受けたでしょう。
そして、戦略が経営者の直感から生まれるということは、
成功できるかどうかはセンスによって決まるのか?
と思われたかもしれません。
いいえ、そんなことはありません。
センスの有効性は否定しませんが、
ある程度システマチックに生き残りに有効な戦略は立てられます。
もちろん中小企業でもです。
むしろこれから話す方法は、その方がいいかもしれません。
そしてそれにはちょっとした思考の変換をすればいいだけです。
また今までと矛盾するようですが、SWOT分析を用いて、勝つ戦略を作り上げることができます。
どうすればいいか?
先ほどSWOT分析をすると、中小企業は弱みや脅威ばかりが列挙されるといいました。
さて、弱みや脅威とは、絶対的なモノでしょうか?
例えば僕は慎重160cmにギリ届かないくらいです。
つまり男性としては小柄な部類です。
はっきり言って、身長は「低い」です。
しかし小学生と比べたら?
はい、身長は「高い」でしょう。
つまり弱み強み・脅威機会とは、相対的な話なのです。
あるいは手作りチョコはどうでしょうか?
手作りなのだから、当然時間がかかります。
「時間がかかる」というのはそのまま解釈すると弱みとなります。
しかし「時間の浪費の象徴」ではなく、「相手へ時間というリソースを使った証明」
として解釈したらどうでしょう?
時間がかかればかかるほど、それは丁寧さ、まじめさ、手の込みようの証明となります。
そしてそれは、そういうことに価値を認める人にとっては価値となります。
また時間がかかるということは、大量生産できません。
つまり、それだけ希少性があります。
価値という需要と、希少性という供給側の論理によって、
手作りチョコにはそれだけ付加価値が生れます。
いま行った思考転換の論理がお分かりでしょうか?
「時間がかかる」という事実は変わっていません。
しかしその解釈を変えました。
つまり、
「弱み」は解釈の仕方によって、「強み」に変わる
ということです。
だから、「弱みや脅威しかない」という風に思うことこそが、
そのように「解釈しているに過ぎない」ということであって、
むしろそれらは実は解釈の仕方によってすべて「強み」に変わるかもしれない、
ということが言えます。
弱みを解釈しなおし、解釈しなおしたものと顧客を結びつける。
しかし解釈によって強みと呼べるようになったとしても、
また一つ足りないものがあります。
それはその強みを利用する顧客です。
理想を言えば、顧客をまず定めて、
それに合う商品を開発するのが、
リスクを最小限に事業を成功させる秘訣です。
しかし現実はまず商品が合って、
それに合う顧客を探し求めるというアプローチのほうが多いです。
この「弱み変換アプローチ」は、まさに現在抱えている「資源」を、
有効活用するにはどうしたらいいか?という問題への解決策となります。
地域活性化などはまさにそれです。
土地という動かせない資源を、どのように有効活用するか?
それに苦労しない人はいないでしょう。
その苦労の源は、
「普通」に考えたら、弱みだらけの土地を、
どうやって活性化していくかというアプローチをするからです。
そもそもそれは「弱み」ではなく、「事実」であると認識しなければいけません。
例えば以前、島根県は「どこにあるか最も分からない県」といわれていました。
これは知名度的には最低である、と言われたようなものです。
しかし、ワーストだろうと、No.1です。
マーケティングにおいて、No.1は唯一無二の価値を持ちます。
島根県は逆に「日本で47番目に有名な県」というキャッチフレーズを使ってPRするようになりました。
(今は30位くらいにランクアップ[逆転思考からすればランクダウン]しているようですが)
自他ともに認める「弱み」は逆に「強み」になります。
逆に誰もが知っている東京などが「みんなに知られててつらいです」
などと言ってもただの嫌味にしかなりません。
これは解釈の逆効果ですね。
解釈の変換はその解釈が刺さる人がいてこそです。
島根の場合は、共感で動く人は自虐ネタを面白いと感じて刺さりましたし、
視聴率を気にするマスメディアも、視聴者受けがいいのでこのネタを取り上げます。
それによってさらに認知度が上がる、いい効果を与えました。
強み発見システム
このような流れをシステマチックに表現するとどうなるでしょう?
まず弱み・脅威を列挙します。
人間は脅威や弱点を強く認識するようにできているので、
いくらでも出てくるでしょう。
しかし列挙したものは、いったん単なる「事実」としてとらえます。
そしてその「事実」を強みとしてとらえられる「解釈」あるいは「基準」を考えます。
そうして見つけた「基準」は、自分たちが相手すべき顧客であるかどうかを見定めます。
自分たちは強みと思っても、相手にとっては別に強みではない、
特にお金を出してほしいとは思わないということはよくあることです。
実際に顧客を相手にしないと分かりません。
そこは試行錯誤です。
しかし提案できるものが何もない状態からは進歩したと言えるでしょう。
まとめると、
「弱み列挙」
↓
「解釈の変更による強み変換」
↓
「顧客仮説」
↓
「検証」
の順で、戦略は決まります。
ここで注意したいのが、戦略は事前にその有効性が分かる静的なモノではなく、
動的に検証して、有効であるかどうか、そして有効になるように構築していくもの、
であるということです。
弱みを解釈変換して強みに変えたときは、それが素晴らしい成功へのロードマップに見えるでしょうが、
本当にそうであるかどうかは試してみるまで分かりません。
だからこそ、事業を成功させるためには、
様々な成功の可能性が「高そう」なアイデアをたくさん試す必要があります。
その「高そう」なアイデアをたくさん産むためのアプローチが、
今回の「弱み変換アプローチ」です。
これはMBA&中小企業診断士の佐藤義典氏のアイデアを参考にしました。
より深く知りたい方は、
『事例でわかる弱みで勝つ!マーケティング戦略 弱みを強みに変える逆転の差別化手法』
を参考にしてください。
今回はここまで。
