最悪の味のブランドがなぜ人気なのか?

酒類を販売するとき、最も重視するのは何か?

当然「味」です。

だから多くの企業はこぞって試飲会を開いたり、
時には無料配布などしておためししてもらったりするわけです。

しかし世の中は面白いもので、味が最悪なのに、
いやむしろ

味が最悪だから価値がある

という酒もあるのです。

それがイエーガーマイスター。
ドイツ発祥のハーブ系リキュールです。

その味をズバリ言うならば、
「歯磨き粉の味!」
などと言われてしまうようなものです。

もともと薬草酒として作られたのだから、
じゃあこれを飲む人は健康のために飲むのかというとそうでもない。
「パーティーで一気に飲む酒」というポジションを得ています。

イエーガーマイスターは1878年、ドイツのクルト・マーストというハンターが狩猟用の携行飲料として開発したのが始まりです。
其の後1935年には食後酒として発売され、2次大戦中には負傷兵用の麻酔薬として活躍しました。
そして1980年代に、パーティー用の酒へと変化したのです。

何があったのか?

1985年、米国のマーケター、シドニー・フランクがイエーガーの米国輸入権を買い取りました。
初期はドイツ系移民が故国を懐かしみながら飲むものにすぎませんでした。

それが変わったのはバトンルージュ・アドボケートという新聞の短い記事からです。

そこにはイエーガーマイスターを

アヘンと催眠剤クアールードと催淫薬が入ったカルト・ドリンク

として紹介していました。

さて、フランクはその記事に対してどのような行動に出たのか?

何百枚もコピーして全国の大学周辺のバーに張り出したのです。
これが引き金になりました。

学生たちはこぞってこのカルト・ドリンクを購入しました。
何しろアヘン入りの輸入飲料などいつ非合法化されるか分からないからです。
今でもラベルにある鹿は、鹿の血が入っていると解釈されたようです。

学生が買ったのは明らかにただのドリンクじゃありません。
それは禁断の飲み物への【あこがれ】です。

そしてその味がひどければひどいほど、
禁断である真実味が増していきました。

それがひどい味であることが逆に魅力になったという謎の答えです。

これはイエーガーだけにの現象でしょうか?

いいえ、ありとあらゆる商品・サービスについて言えることです。

無印良品などは派手なデザインにしないことで、逆に環境への配慮という付加価値をつけています。
スターバックスなどはコーヒーそのものよりも、その場所事態に付加価値をつけています。

多くの場合、消費者は単に商品を買っているだけではないのです。
そのブランドが発信する意味付けを含めて買っています。
つまり、その商品を買うことで、自分が何者なのかを証明しているわけです。

そのことを含めて、ビジネスを考えてみるべきです。